精子数と運動性

受精に至る過程ですが 膣内で射精された精子がそれ自信の運動で子宮をさかのぼり卵巣とのパイプとなる輸卵管へと進んで行きます

一方 卵巣から排卵された卵子は輸卵管を経由し子宮の方へと進みます。
ほとんどの場合 精子と卵子は輸卵管の中で出会い 受精(融合)が行われその受精卵は子宮へと降りていき着床します。
この時の着床の場所が子宮でなく輸卵管で行われることもあり これがいわゆる外妊(子宮外妊娠)と言われるものです。

人体では基本的に2つある卵巣の一方から1つの卵子が排卵され精子とは1対1の関係で受精が行われるようになっています。

排卵誘発剤の使用はこの排卵のバランスが崩されるため 過排卵になり3つ子や4つ子の受胎もあることは御存知だと思います。
まれに 何の薬剤の投与もせずに過排卵が起こることがあり 2つの卵子にそれぞれ受精が行われ着床が成功した場合には2卵性双生児の受胎と言うことになります。
また これもまれですが1つの卵子に2つの精子が受精(融合)することがあります。この場合は1卵性双生児の受胎と言うことになります。

このように1つの卵子に2つ以上の精子が受精することを多精子受精と言い一般的に多精子受精が行われた受精卵はその後の卵割(分裂)がうまくいかず受胎には至らないことが多いとされています。

2人以上の同時受胎は母体に過剰な負担がかかることと同時に胎児側にも充分な栄養分が回らないと言う危険性が伴うことからこれは恒久的な種の保存の観点から考えると 納得できることだと思います。
この多精子受精の排除の機構は受精後の卵割の阻止のみならず受精時においても働いています。

その一つに表層反応(cortical reaction)というものがあり これは卵子細胞の周りを取り巻いている透明体(zona pellucida)が精子を中に通しその精子が卵子細胞の膜に融合すると透明体の構造が変化しそれ以上の精子を通らなくさせるというものです。

次に受精に関わる男性側(精子)のファクターについて触れておきます。

重要なものとしては
1.精子数
2.精子の運動性(運動能力)
3.受精能獲得(capacitation)精子の数(比率)
4.先体反応(acrosome reaction)惹起精子の数(比率)
などがあります。

射精された精子はそれ自信の運動で子宮をさかのぼり輸卵管へと進んで行きます。
この間に大半の精子が進むことが出来なかったり迷走したりしてドロップアウトしてしまいます。
(統計的には3億の精子が射精されたとして卵子と出会うことの出来る精子は200程度と言う数値が出ています。
さらに精子は卵子細胞の周りの濾胞細胞層や透明体を通過しなければなりません。
ここでも運動性によるセレクションが行われているわけです。

運動能力の高い精子がたくさん卵子のところへ行けば行くほど受精の成功の確率は高まります。

精子の受精能獲得と言う言葉は聞き慣れないのではないでしょうか?
実は精子は射精された時の状態のままでは受精できない状態にあります。
子宮内をさかのぼって行く精子は子宮内の分泌物により受精能を獲得するとされています。

その詳細はいまだ不明ですが 精子の運動性への関与や精子の膜や脂質に何らかの変化が起こることが知られています。
精子の先体反応ですが これは卵子の濾胞細胞層を通過し透明体に達した精子が起こす反応のことです。
精子の頭部には先体と呼ばれる部分があり この膜がある種の酵素で分解され(先体反応:acrosome reaction)中の膜が露出しないと受精できないとされています。

これら1.~4.の全ての条件を満たした精子がもっとも受精する確率が高いということはもちろん これらの条件を有していない精子は受精することができないということになります。

もちろんこれらの機能は老化(加齢)によって低下しますが その(低下)度合いも個人差があります。
一方 逆に考えますと受精能を獲得した非常に運動能力の高い精子が1つ
あれば受精は可能だということにもなります。