妊娠中の生活

妊娠中には注意しなければならない点がありますが、あまり神経質になるのもよくありません。

まず妊娠初期。流産のほとんどが初期流産。2~3か月目までは心身の負担になるような行為はなるべく避けることが重要になります。

重いものを運んだり、下腹部に力を入れる作業などは避けたいですし、ストレスもなるべく蓄積しないようにしたいものです。

それから夫婦の性生活。妊娠中の性生活は安定期になるまではできるだけ控えるのが一般的です。また妊娠10か月目に入った場合も控えます。安定期には問題なくできますが、無理なく行う必要があります。あまり刺激の強い行為には注意。また感染症の恐れがあるので清潔な状態で行うことも不可欠となります。

安定期に入ると問題になってくるのが体重増加。食欲も増してついつい食べ過ぎてしまうことも多くなってきます。大幅な体重増加は妊娠中毒症・妊娠糖尿病といった症状の原因となったり、難産をもたらします。体重管理はしっかり行い、栄養バランスを考えながら食事の量と質を調整したいものです。

ほかにも妊娠中の注意点はいくつかあります。たとえば便秘対策。妊娠中は便秘に鳴りやすいものですが、下剤や浣腸は危険があるので使用してはいけません。また、薬を服用する際には事前に主治医によく相談し、問題がないかどうかを確認しておく必要があります。

こういった妊娠の注意点を踏まえた上で妊娠生活を送る必要があります。
とはいえ、あまり神経質になってはストレスが溜まってしまいますから、ごく常識的に考えて自然な生活を送るよう心がけることが重要になってくるでしょう。

妊娠初期
妊娠1ヶ月(0~3週)はお母さんの子宮の大きさはほとんど変わりません。赤ちゃんについては、受精卵が活発に細胞分裂を繰り返します。

また、妊娠8週目までの赤ちゃんは「胎芽(たいが)」と呼ばれます。
妊娠2ヶ月(4~7週)は、月経が予定日を過ぎても起こらず、妊娠に多くの人が気付きます。この時期は、基礎体温の高温期が続くため、体が熱っぽかったり、だるかったりなどのカゼに似た症状を感じる場合があります。また、ホルモンが変化するため、乳首が黒ずんできたり、乳房が張ったりする人もいます。子宮は、一回り大きくなって、腰や下腹部が少し不快に感じることもあります。人によっては、つわりが始まります。一方、赤ちゃんは、身長がおよそ2cmになり、心臓が形作られてきて、心拍音を確認することができるようになります。

妊娠3ヶ月(8~11週)のお母さんの子宮は、にぎりこぶし大にまで大きくなります。そのため、膀胱を子宮が圧迫し、頻尿になることがあります。

ほとんどの人が、つわりを感じるようになります。つわりの症状は10~11週がピークで、その後徐々に軽くなり、15週頃までにはほとんどの人が治まります。

また、流産の危険性があるので、激しい運動は控えましょう。一方、赤ちゃんは、身長がおよそ8cm、体重がおよそ20gになり、頭部、胴体、手足ができてきて、8週を過ぎる頃には動き始めます。
妊娠4ヶ月(12~15週)には、つわりが治まって食欲が回復し、おなかも膨らみ始めます。足のつけ根が痛くなったり、つったりすることがあります。胎盤は、14週過ぎにはほぼ完成するので、流産のおそれも低くなります。赤ちゃんは、体重がおよそ100g、身長はおよそ15cmになり、手・足や内臓の形ができ、大脳や小脳なども成長します。また、筋肉や骨も発達するので、赤ちゃんは自由に羊水の中で動き回ることができるようになります。

妊娠中期
妊娠中期は、流産の発生率が低くなり、「安定期」と呼ばれる時期です。

赤ちゃんも大きく成長し、さまざまな機能も発達します。

妊娠5ヶ月(16~19週)は、おへその位置くらいまで子宮が達し、おなかの膨らみがさらに目立ってきます。また、乳腺が発達するので、乳房が大きくなってきます。早い人では、18週頃に胎動を感じます。赤ちゃんは、へその緒を通じて、酸素や栄養を胎盤からもらっています。この時期の赤ちゃんは、身長がおよそ25cmに成長します。心臓や肺も働きが強まり、心音を聴診器から聞き取ることができるようになります。口や耳、鼻が完成して、髪の毛や爪も生えてきます。

妊娠6ヶ月(20~23週)には、はっきりとおなかの膨らみがわかるようになり、胎動をほとんどの人が感じます。血液量が増えて、心臓や肺を子宮が圧迫するので、動悸や息切れを感じることが多くなります。腰痛になることもあります。また、黄色っぽい初乳が出てくる人もいます。乳首のお手入れも始めましょう。赤ちゃんは、体重がおよそ500g、身長およそ30cmになります。まつ毛や眉毛が生え始め、まぶたを開くこともできるようになります。

妊娠7ヶ月(24~27週)には、おへその上の方までおなかが膨らんできて、前にせり出してきます。「卵胞ホルモン」が増えて、体を動かした時などに、おなかが張りやすくなります。背中や腰に負担がかかり、痛みを感じる人もいます。また、便秘や痔などのトラブルも起こることがあります。胎動は強く頻繁になりますが、もし全く感じられない日があったら、受診することをおすすめします。一方、赤ちゃんは、26週頃には、身長がおよそ35cm、体重およそ800gになります。耳や目が発達して、音と光を感じるようになります。手をグーパーさせるような、細かい体の動きもできるようになってきます。

妊娠後期
妊娠8ヶ月(28~31週)は、最も胎動が激しくなり、痛みを感じることもあります。さらに子宮が大きくなって、脂肪がおなかに付いて、妊娠線ができることがあります。手足にむくみが出ることもありますが、一時的に出る場合は心配ありません。しかし、終日むくんでいるような場合は、「妊娠中毒症」の疑いも考えられるので受診しましょう。30週頃の赤ちゃんは、身長およそ40cm、体重およそ1500gまでに成長し、姿勢や位置がだんだんと決まってきます。また、皮下脂肪が体に付き始めます。

妊娠9ヶ月(32~35週)には、みぞおちの辺りまで子宮底が上がってくるので、胃もたれや胸やけを感じることがあります。また、肺や心臓も圧迫されてくるので、頻繁に動悸・息切れがします。さらに、膀胱を赤ちゃんの頭が圧迫するようになるので、頻尿や尿もれを起こすことも多くなります。歩いていると、恥骨や足の付け根が痛くなることがありますが、これは、骨盤辺りにまで赤ちゃんの頭が下がってきたためで、お産が近づいてきている証拠です。34週頃の赤ちゃんは、身長およそ45cm、体重およそ2200gです。羊水を飲んで、おしっことして出しています。

妊娠10ヶ月(36~39週)には、骨盤内に赤ちゃんが下がって、さらにおなかが突き出してきます。ますます恥骨や足の付け根の痛みが増します。また、子宮口や膣が柔らかくなり、おりものの量が増えます。おなかが1日に何度も張るようになります。さらに、軽い陣痛のような痛みの「先駆陣痛」が起こることもあります。39週頃の赤ちゃんは、体重がおよそ3000g、身長およそ50cmです。口の周りにある筋肉も十分に発達しているので、おっぱいを吸う準備ができています。

妊娠中の注意点
妊娠中にお酒を飲むと、アルコール成分が胎盤を通じて、おなかの赤ちゃんに流れてしまいます。大量にアルコールを摂取すると、発育、知能、運動面において、赤ちゃんに障害を与える原因となります。妊娠したら、お酒を飲まないようにしましょう。どうしてもやめられないという人は、ごく控えめにして、毎日飲酒を続けるのはやめましょう。

次は、喫煙についてです。たばこには、ニコチンなどの有害な物質が多く含まれています。また、たばこを吸うと、血液の循環に悪影響を与えるため、酸素や栄養が、赤ちゃんに十分伝わらなくなります。そして、流産や早産などのさまざまなトラブルを引き起こしたり、低体重児が生まれたりすることがあります。また、自分が吸わなくても、周りの家族などが吸っていると、その煙をお母さんが吸い込んだだけでも害になります。家族にも協力してもらいましょう。

最後は、薬についてです。最も薬の影響が心配なのは妊娠初期です。16週を過ぎると、ほぼ赤ちゃんの体ができ上がってくるので、それほど影響もなくなります。体調によってどうしても薬が必要なこともあると思いますが、自分だけで判断しないで、かかりつけの産科に相談しましょう。また、ほかの科でも受診する場合は、必ず医師に妊娠していることを伝えましょう。

妊娠中の寝る姿勢
妊娠中に、仰向けに寝ると、気持ちが悪くなったり、苦しくなったりしますが、これは、子宮が大きくなったため、大静脈が圧迫され血行が悪くなり、心臓に血液が戻りにくくなるためです。妊娠中は、横向きの姿勢で寝るのがおすすめです。また、妊娠すると循環する血液量が増えるので、きちんと循環するために、枕などで上半身を少しだけ上げて寝るのも良いです。
枕も眠りには重要なアイテムになります。負担のかからない、自分に最適な枕を探してみましょう。ひざを曲げて横向きで寝る「シムスの体位」も、全身がリラックスできるので、妊婦さんにはおすすめの姿勢です。また、上になる足のひざを曲げて、その下にクッションを置くと、さらに楽ですよ。
妊娠中は、左半身を下になるように寝ると良い、と言われます。人間の体には、左側に大動脈、右側に大静脈が流れています。静脈は弾力性が小さいので、おなかの大きい妊婦さんが、右側を下にして寝ると、大静脈は圧迫されつぶされた状態になります。そのため、血行が悪くなり、眠る時に苦しく感じるのです。さらに、リンパ管も押さえつけられるため、むくみが出たり、静脈瘤が生じたりする原因にもなります。むくみが出やすい人は、寝るときに右側を上にしましょう。
また、眠りと体温も深く関わっています。お風呂上がりの体がほてった状態は、交感神経が優先となるので、スムーズに寝つくことができません。入浴後は、体温が戻ってから布団に入るようにしましょう。

妊娠中の服装
妊娠中のインナーは、まだおなかの膨らんでいない妊娠初期は、締め付け過ぎないものならば、普段使っているインナーでも良いですが、中期になると、おなかや胸が大きくなってくるので、マタニティインナーに切り替えた方が良いでしょう。
バストのサイズは、人によって違いますが、1.5サイズほど大きくなります。マタニティ専用のブラジャーは、乳腺に負担をかけないように作られていますし、特にソフトタイプのものなら、さらに大きくなっても使えます。また、授乳時にも使えるような、産前・産後で使用できるものも多くあります。
今でも、妊娠5ヶ月の「戌の日」に、腹帯を巻いて安産祈願をする風習が残っていますが、昔ながらのさらしの腹帯より、日常生活では、ガードルタイプやコルセットタイプの着用しやすい妊婦帯がおすすめです。おなかを保護したり保温したりするためにも、妊婦帯を着用すると良いでしょう。また、妊娠8ヶ月に入ったら、産褥用ショーツや、骨盤を矯正するウエストニッパーなどの出産準備を始めてください。
アウターは、インナーと同じように、中期頃までは、ゆったりと着られるワンピースやジャンパースカートなどでも良いでしょう。でも、後期には、おなかがさらに大きくなるので、マタニティウェアを利用した方が、体に負担をかけません。最近では、とってもおしゃれなマタニティウェアが販売されていますよ。
また、ヒールの高い靴など不安定な靴は、転倒する危険性があるので、ヒールが低く履きやすいものを選びましょう。